ドアの電子ロックが「ピッ」と鳴って開くと、健一は無言で中に入った。 47歳の体は重かった。今日も現場で17時間拘束。ヘルメットと作業着を脱ぎ捨てた後のシャツは汗と埃で固くなり、首筋には埃がこびりついている。
ベッドに腰を下ろした瞬間、スマホが震えた。
彩花:もう着いたよ。部屋番号は?
健一:712
一分後、控えめなノック。 ドアを開けると、化粧の薄い彩花が立っていた。29歳。昼はスーパーのパート、夜は裏アカで「即日1万円」。前回と同じ、黒のシンプルなワンピースに膝丈コート姿。香水もほとんどつけてない。
「お疲れ様。2回目だね」
彩花は淡々と靴を脱ぎ、コートをハンガーに掛けた。 健一は財布から1万円札を一枚抜き、無言で渡す。彩花はそれを素早くバッグにしまい、スマホのアラームを10分後にセットした。
「シャワー、いいよね? 今日はもう時間ないし」
健一がそう言うと、彩花は小さく頷いた。
「うん、私も疲れてるから省略でいいよ」
ベッドの端に腰掛けた健一はズボンと下着を膝まで下ろした。 彩花はワンピースの裾をまくり、ストッキングとショーツを一緒に足首まで落とす。 下半身だけ裸になった二人は、言葉を交わさずベッドに上がった。
彩花は健一の太ももの上に跨り、片手で彼のものを軽く扱くと、すぐに自分の入り口にあてがった。 前戯は一切なし。唾液すらつけない。
「んっ……」
わずかな息を漏らしながら、彩花が腰を沈める。 乾いた挿入感。痛みとわずかな摩擦が、健一の疲れた神経を一瞬だけ刺激した。
彩花は上半身をほとんど動かさず、腰だけを前後に小さく振る。 機械的で、リズムも単調。目線は壁の時計に向いている。
健一もただ仰向けに横たわり、両手を投げ出したまま。 体は重く、動かす気力すら残っていない。彩花の内側の締まりと熱だけを、ぼんやりと感じていた。
部屋には湿った肌が擦れる音と、時計の秒針だけが響く。
アラームが鳴ったのは、開始から8分47秒後だった。
彩花はすぐに腰を上げ、健一のものを抜いた。 ティッシュを数枚取って股間を軽く拭き、ストッキングとショーツを素早く履き直す。
「じゃあ、またね」
健一は天井を見つめたまま、小さく手を上げた。 返事はしない。
彩花はコートを羽織り、1万円が入ったバッグを抱えて部屋を出て行った。 ドアが閉まった後、健一はズボンを直さぬまま、深い溜息とともに目を閉じた。
まだ汗も拭いていないまま、眠気がすぐに彼を飲み込んだ。